LCCとは?JAL・ANAなど、他航空会社との違いを比較!安さの理由も解説
更新日:2025年3月25日

現在、観光からビジネスまで、多くの人が移動手段として利用しているLCC。こちらが何の略であるかをみなさんはご存知でしょうか。答えは格安航空会社を意味するローコストキャリア(以下、LCC)で、日本では2010年代初頭から本格的に運航が開始されました。今や旅行の際の移動手段として必要不可欠な選択肢となっているLCC。今回は、その特徴やサービス内容を紹介します。
目次
- LCC(ローコストキャリア)について
- LCCと他の航空会社との違い
- 価格
- マイル
- 機内サービス
- 機内設備
- 座席
- 預け荷物
- チェックインカウンター
- LCCが安い理由って?
- LCCが安全である理由
- まとめ
LCC(ローコストキャリア)について

LCCは、機内設備の簡略化など、さまざまな工夫で効率的な経営を行い、運賃を低価格化している航空会社です。海外では1970年代終盤から運用が開始され、日本ではピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパン(現在は路線を廃止)の3社が運航を開始した2012年がLCC元年とされています。現在、運航している日本の航空会社は、ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、スプリング・ジャパン、そして国際線専門のジップエア・トーキョーがあります。国内線・国際線を問わず多くの便が日々、運航されています。
LCCと他の航空会社との違い

全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)などの大手航空会社をフルサービスキャリア(以下、FSC)といいます。FSCとLCCではサービスの内容に大きな違いがあり、FSCを利用する人は、航空券の金額が高価になりますが、それに見合った様々なサービスを受けることができます。一方、LCCは、FSCが請け負うような搭乗の際の手間を自分でこなすことになりますが、少しでも費用を安くしたいという人に適した移動手段といえるでしょう。ただし、航空会社によっては、持病のある人や高齢者、幼児を含む家族、パスポートの期限が半年を切っている人が利用できないなどの制限が設けられていることがあります。また、スターフライヤー、スカイマーク、ソラシドエア、エアドゥなど、サービス・価格ともにFSCとLCCの中間に位置する航空会社はミドル・コスト・キャリア(MCC)、または「第3の航空会社」と呼ばれています。
価格
LCCでは、着陸料金の安い空港の利用、機内サービスを有料化、航空券の予約・販売をオンラインや電話に限定など、あらゆる工夫で経費を削減し、低価格での運航を実現しています。航空券はFSCと比較して2~5割安いとされており、基本的に空席が多いほど料金が安くなる「空席連動型運賃」を各社で導入しています。突発的に行われる限定セールでは、さらに金額が下がることがあり、とりあえず航空券を購入して旅行の予定を立てるという人もいます。また、航空会社によっては燃油サーチャージを徴収しないことで料金を抑えている場合もあります。
マイル
LCCのマイルへの対応は、会社によって様々です。ピーチ・アビエーションには、ピーチの運賃や料金などの支払いに使える「ピーチポイント」という制度があり、ピーチカードの利用でポイントを貯めることができます。また、ANAのマイルをピーチポイント交換用のクーポンに変換するサービスもあります。ジェットスター・ジャパンでは、JALマイレージバンクの会員に登録しているとフライト予約時にJMBマイルを選択してJALマイルを貯めることができます。2018年に日本初の国際線中長距離LCCとして設立されたジップエア・トーキョーでは、「ZIPAIR Point Club」への入会でマイルを貯めることができ、JALのマイルへの交換も可能です。MCCでも、ソラシドエアやエアドゥが独自のポイントサービスを行っています。
機内サービス
LCCでは基本的に機内での食事・ドリンクが有料です。航空会社によっては保安検査後から搭乗までの間にフードコートなどで買った飲食物を機内に持ち込むことができます。しかし、生石灰を使用した加熱式の弁当、おかゆやレトルトカレーなど、ペースト状で液体物に分類される食べ物、缶詰・瓶詰めは持ち込みが不可となっています。また、機内で視聴する映画や音楽などのエンターテインメントについては、有料もしくは提供そのものを行っていないケースもあります。毛布やブランケットも大半の会社が有料としていますが、準備されていないこともあります。冬の時期に搭乗する場合は防寒対策をしておきましょう。
機内設備
低価格での運航を実現させるために、設備面でも様々な取組が行われています。航空機は、一つの会社で使用する種類を統一することで整備にかかる人件費、パイロット育成にかかる費用などを大幅に抑えています。使用する部品を限定することもコストカットに繋がっています。機内でも大半の会社がFSCで見られるような座席に付いた映画鑑賞用のモニターなどを省略しています。緊急時に使用する救命胴衣や酸素マスクなど、安全面に関わるものはFSCと同様のものが備えられ、離陸前に使い方の説明が行われます。
座席
LCCの座席はFSCよりも間隔を狭くすることで、多くの配置数を確保しています。シートピッチも5cmほど狭くなっているので、人によっては窮屈さを感じるでしょう。座席の指定は有料オプションになっていることが多く、航空会社によっては完全に自由席として指定できない場合もあります。また、各社でシートのクラス分けもあり、ピーチ・アビエーションでは追加料金を払うことでスマートシート、またはファストシートを利用できます。ジェットスター・ジャパンでは、スタンダード・シートの他にアップフロント・シート、広さが自慢のエクストラ・レッグルーム・シートが用意されています。
預け荷物
預け荷物についてはFSCとは異なり、それぞれの会社で独自のルールが設けられています。ピーチ・アビエーションでは、最も安い「ミニマム」は預かり荷物が有料となり、総重量制限100kg(1個あたり32kgまで)と定められています。「スタンダード」「スタンダードプラス」などのプランでは1個無料での預かりを行っています。ジェットスター・ジャパンでも、最も安い「Starter」での預け荷物が有料となっています。その上のプランでは無料受け入れを行っており、「Starter Plus」で20kgまで、「Business」「Business Max」は、30kgまでと重量が定められています。
チェックインカウンター
LCCの搭乗手続きは、各会社のカウンター前に設置されている自動チェックイン機や、どこでもチェックインできるスマートフォンのアプリなど、オンラインの機能を利用することで効率化が図られています。オンライン機能を使えない人はカウンターで有人でのチェックインを利用することができます。また、体が不自由で搭乗の際にサポートが必要な人は、航空券の予約時にその旨を伝えておけば、チェックイン後、スタッフによる介助を受けることができます。チェックイン時間のリミットがFSCよりも10分程度早い点にも注意が必要です。
LCCが安い理由って?

LCCを低価格で利用できるのは、これまで述べてきた
・使用する航空機を統一することで整備などにかかる人件費を削減
・機内サービスの有料化、もしくは廃止
・座席の感覚を詰めることで登場できる人数を多くする
・航空券の販売・予約をオンライン、もしくは電話受付に限定
・最安プランでの預け荷物を有料化
といった経費削減の努力が主な理由となっています。
航空機での移動にそこまで快適性を求めず、とにかくコストを抑えたいという人にとってLCCは最適な移動方法であるといえるでしょう。しかし、安さが魅力である反面、遅延が多いことやフライトキャンセル時に満足な対応が受けられないといったデメリットがあることも意識しておきましょう。
LCCが安全である理由

LCCの安い運賃=危険性の高さと捉えている人もいるかも知れません。しかし、日本のLCCでは、これまでに墜落のような重大な事故は発生していません。LCCの安全性の高さには、事故を未然に防ぐための対策が徹底されているという背景があるといえるでしょう。
その【1】
LCCの機体は中古の格安というイメージを持たれがちですが、どの会社も比較的、新造機を導入する傾向にあります。使用期間についても、稼働率やメンテナンスのコストを総合的に判断したうえで機齢が低いうちに退役させることが多くなっています。ANAホールディングスの子会社であるピーチ・アビエーションでは、世界で最も安全いわれているエアバス社のA320やA321を使用しています。
その【2】
航空会社は規模の大小に関係なく定期的に監査を受けることが義務付けられています。パイロットや整備士が的確な資格を有しているか、航空機の整備は正確に記録されているか、正しい運航手順をふんでいるかなど、さまざまなチェックを受け、基準に満たない場合は運行停止、さらに厳しい場合は営業許可の取り消しといったペナルティが課せられます。このため、LCCも安全性の担保には重点的に取り組んでいます。
その【3】
LCCのパイロットは、他社で長年の経験を積んだベテランが採用されることが多く、技術面については保証されているといえるでしょう。自社のノウハウを知り尽くしたパイロットの確保も安全対策を講じるうえで重要となってきます。ピーチ・アビエーションでは、2019年から自社でパイロットを育成する制度を開始。2024年1月には5年の訓練を終えた受講生が副操縦士に昇格しました。
まとめ

高価なイメージであった空の旅を身近なものにしたLCC。時期によっては、鉄道など陸路よりも割安になることから、今後さらに利用者の増加が期待されます。航空会社によって価格や運行状況が大きく異なるため、少しでもお得に利用するには事前の情報チェックが重要になってきます。本記事でLCCの魅力を知った人は、旅行の際、移動手段の選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。