飛行機に薬は持ち込める?医薬品を海外へ持ち出す際の手順や注意点を解説
更新日:2025年10月27日
持病がある人や旅行先での体調不良が懸念される人は、飛行機内や旅行先での急な事態に対応できるよう、薬を持ち込んでおきたいところ。飛行機への薬の持ち込みは、一定のルールや注意点はありますが、そこまでハードルが高いものではありません。事前にルールを把握し、安心して空の旅を楽しめるようにしておきましょう。
目次
- 飛行機への薬の持ち込み制限について
- 【種類別】飛行機に持ち込める薬は?
- 市販薬の場合
- 処方薬の場合
- 飛行機に持ち込む際に特に注意が必要な薬
- 飛行機に薬を持ち込む手順
- 医薬品を海外へ持ち出す際の注意点
- 医師による診断書(英文)など特定の文書が必要か確認する
- 薬は購入した容器のまま持っていく
- 渡航中に必要な分だけ持っていく
- 郵送するのは避ける
- 事前に渡航先のルールを確認する
- 海外旅行で役立つ!薬に関する簡単な英語表現
- まとめ
飛行機への薬の持ち込み制限について
飛行機の荷物の持ち込みには、テロの防止や安全対策の観点から、一定の制限が設けられ、爆発の恐れがある危険物や凶器などは規制の対象とされています。医薬品の持ち込みは必要最低限までとされていますが、基本的に種類や量についての厳しい制限はありません。しかし、液体薬で処方箋のないものは他の液体と同じ扱いになり、容器の容量が100ml以内で、1L以内の透明袋1枚に入れておくことが持ち込みのルールとされています。全日本空輸(ANA)をはじめとする主な航空会社では「医療機器・医薬品類は預け荷物とは別に無料での預けが可能」というルールが設けられています。持ち込みに関する詳しいルールはこちらの記事でも紹介しています。
【種類別】飛行機に持ち込める薬は?
飛行機へ持ち込む薬は、本人が使うものであれば特に厳しいルールは設けられておらず、一部の例外を除き、どのような種類でも持ち込むことができます。しかし、市販薬と病院からの処方箋を受けて出された薬では準備が異なってくるので、違いを事前に把握しておきましょう。
市販薬の場合
ドラッグストアや量販店の医薬品コーナーで販売されている薬の持ち込みは、特に種類や量の制限はありません。国際線の場合も、税関での許可申請は必要ありません。しかし、開封したものを袋や瓶に小分けにすると手荷物検査で内容を聞かれた際、時間がかかってしまう可能性があります。国際線の場合、成分が分からないと持ち込みができなくなる可能性もあるので、市販薬は外箱や説明書などを一緒に持ち込むのが良いでしょう。なお、パッケージに第1類~第3類医薬品と明記されているものが医薬品となり、それ以外は医薬部外品や化粧品の扱いになります。
処方薬の場合
病院で自分が服用するために処方された薬は、錠剤・粉薬・液体など、どのような種類でも持ち込むことができます。持ち込みの際は、薬を受け取る際に一緒に渡される薬剤証明書を持参しておきましょう。どのような病状で薬を服用しているかを分かるようにしておくと緊急時の対応に役立ちます。他にも処方箋の写し、お薬手帳、医師の診断書など、身体の状態や服用している薬の情報がわかるものがあれば携行しましょう。
飛行機に持ち込む際に特に注意が必要な薬
法律で規制されている一部の医薬品、「麻薬」「向精神薬」「覚せい剤原料」は、渡航先の国によって輸出入基準が異なるため、持ち込む際には注意が必要です。
医師からの処方を受け、自身の治療目的で服用している麻薬や、覚せい剤原料に該当する医薬品は、国内線においては持ち込み可能ですが、国際線の場合は厚生労働省地方厚生局麻薬取締部への許可申請が必要になります。申請書の提出後、受理されるまでには1週間~10日程度の時間を要するので、遅くても出発の2週間前までには申請を済ませておきましょう。一方、向精神薬は法律により携帯できる上限が定められています。その範囲内であれば許可申請は不要ですが、品名や数量が記載された医師の診断書や処方箋の写しを所持しましょう。
なお、日本ではかぜ薬に含まれていることが多い咳止め成分のコデイン(リン酸コデイン、コデインリン酸塩など)も海外では依存性の高さから持ち込みが禁止されている国があるため、持ち込んだ薬が渡航先で携帯禁止になっていないか、在日公館への事前問い合わせを推奨します。
飛行機に薬を持ち込む手順

薬を飛行機に持ち込む際の手順は以下の通りです。
STEP1必要書類等の確認
まず医薬品の種類や使用目的によって準備が異なります。処方薬の場合は、処方箋の写しやお薬手帳、医師の診断書を準備しておくと安心です。海外に渡航する場合は、国や地域によって薬の成分が制限されることがあるため、渡航先の規定を事前に確認します。自己注射器や吸入器などを使用する場合は、医療用であることを証明できる書類を用意しておきましょう。
STEP2持ち込み準備
医薬品は確認・服用がしやすいよう、スーツケースではなく手荷物にまとめておくと安心です。錠剤やカプセルは外箱やラベルを残しておき、薬名や用法が分かる状態にしておくことが大切です。液体やジェル状の薬は、国際線では100ml以下の容器に入れ、1L以内の透明袋にまとめるのが原則ですが、医療目的の場合は例外となる場合もあります。必要に応じて証明書を提示できるように準備しましょう。
STEP3保安検査場での申告・提示
保安検査場では、医薬品を持っていることを係員に申告し、場合に応じて必要書類や薬をまとめて提示します。特に注射器や液体薬などは、X線検査時に確認を求められる場合があるため、すぐに取り出せるようにしておくとスムーズです。疑義が生じた場合は別室での検査になることもありますが、薬の内容や医療目的を説明できる書類があれば迅速に対応できます。検査後は薬を手荷物に戻し、機内で必要に応じて使用します。
医薬品を海外へ持ち出す際の注意点

医薬品を所持して海外へ渡航する場合、各国の制度によって異なる必要な準備や手続きに従う必要があります。そのため、事前に知っておきたい注意点をいくつか紹介します。
医師による診断書(英文)など特定の文書が必要か確認する
国際線の場合、渡航先によって薬の規制基準に違いがあるため、処方箋において薬剤証明書の提示を求められるケースがあります。薬剤証明書とは、患者の氏名や疾患名をはじめ、薬剤の一般名や含有量、数量、処方医の署名などが記載されたものです。アメリカでは、医薬品の持ち込みについて、英語で記載されているもしくは翻訳者署名のある英訳を付した処方箋または診断書の携行が必要というルールが定められています。
厚生労働省のホームページでは、「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて」と、国ごとに異なる医薬品の情報がPDFでまとめられているので、事前に必要なものがないか確認しておきましょう。
薬は購入した容器のまま持っていく
機内へ持ち込む医薬品は、服用目的や薬の成分が分かるように購入時の容器やパッケージに入った状態で持参しましょう。これは空港の手荷物検査などでチェックを受けた際、スムーズに説明できるようにするためのもので、普段、ピルケースや瓶に薬を分けている人は注意が必要です。市販薬はパッケージに入った状態で手荷物に入れておけば大丈夫ですが、処方薬の場合、大量の薬を一包化していると、なんのための薬かが判別できず、正規の薬ではないと疑われることがあります。特に医療用麻薬や向精神薬はチェックが厳しくなるため、一包化せず、もともと処方された状態で持参しましょう。粉薬も違法薬物であると疑われることがあるため、可能であれば調剤薬局で錠剤やカプセルの状態で処方してもらいましょう。
渡航中に必要な分だけ持っていく
市販薬を数多く持ち込むと、渡航先で販売する営利目的とみなされ税関で引き止められることがあります。1週間程度の滞在なのに数ヵ月分もの量を所持していると嘘の申告をしていると捉えられ、搭乗までの時間を大幅にロスしてしまいます。機内に持ち込む薬の量は、旅行先で滞在中に必要な分だけとし、常識の範囲を超えないようにしましょう。
郵送するのは避ける
荷物を少しでも減らしたいという思いから、薬を含む荷物をホテルや宿泊施設に送っておきたいという人もいるかもしれません。しかし、旅行先への薬の郵送はハードルが高いのが実状です。国内でもホテル側が受け取りを拒否しているケースが多く、海外では、服用している薬が渡航先で規制の対象になっていると事前の手続きが必要、もしくは一切持ち込みができないケースもあります。長距離での郵送となると紛失の危険もあるため、薬は基本的に手荷物として機内に持ち込むほうが良いでしょう。
事前に渡航先のルールを確認する
日本では普通に流通している薬でも海外では規制の対象となることがあります。薬に関する法律は国ごとに違いがあり、普通のかぜ薬や胃腸薬でも成分の内容や含有量が渡航先の基準を超えていれば手続きが必要になることもあります。特に医療麻薬や覚せい剤原料の薬は、日本から出国する際に、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部へ許可申請等の手続きが必要になります。医療麻薬と覚せい剤原料では規制する法律が異なるので、ひとまとめにして申請することはできません。また、英訳の診断書が必要な場合は早めに作成の手続きを進めておきましょう。
海外旅行で役立つ!薬に関する簡単な英語表現
海外で体調不良に陥った際、自分の症状や服用している薬の情報を英語で話すことができるとサポートを受けやすくなります。ごく簡単な英文を組み合わせることで、おおよその状態を伝えられます。
- Is there a pharmacy nearby?(近くに薬局はありますか?)
- Where can I find a drugstore?(ドラッグストアはどこですか?)
- Do you have something for ○○?(すみません、○○の薬はありますか?)
- Can you recommend something for ○○?(○○のためのおすすめの薬はありますか?)
- Are there any side effects?(副作用はありますか?)
- How many times a day should I take this?(これは1日何回飲めばいいですか?)
- How often should I take this?(どのくらいの頻度で飲めばいいですか?)
- Can I take this with other medicine ?(他の薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?)
- I have diabetes/cancer/asthma.(私は糖尿病/がん/喘息です)
- I must inject insulin daily.(私は毎日インスリンを打たなければいけません)
- This is Glucose-meter.(これは血糖値を測定する機器です)
- This is an inhaler for asthma.(これは喘息の吸入器です)
まとめ
飛行機に薬を持ち込む場合、ルールを守っていれば特に問題はなく、搭乗の妨げになることはありません。国内線は基本的に日本で流通している薬なら、ほとんど問題なく持ち込めるでしょう。しかし、国際線の場合は、事前の手続きに時間を要するものがあります。渡航中や現地での滞在中、コンディションを良好に保つためにも、入念な下調べをして快適に旅を楽しめるようにしましょう。